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大阪高等裁判所 平成4年(う)1119号 判決

本店所在地

大阪府大東市北条三丁目一二番三〇号

(旧所在地 大阪府八尾市太田新町二丁目六二番地)

ホット株式会社

(代表者代表取締役 山下力)

右の会社に対する法人税法違反被告事件について、平成四年一一月一七日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告会社から控訴の申立があったので、当裁判所は次のとおり判決する。

検察官 岩橋廣明 出席

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人辻公雄作成の控訴趣意書に記載のとおりであるから、これを引用する。

論旨は、量刑不当の主張であるが、原判決の罰金額を減ずるのが相当である、というのである。

調査すると、本件は被告会社にかかる法人税法違反の事案であるが、代表取締役である山下力が被告会社の業務に関して、昭和六二年一〇月から平成二年一〇月までの三事業年度にわたり合計一億七五〇〇万円余りの法人税を免れたというものである。

被告会社は昭和四六年四月に株式会社ホット製作所として設立され、平成三年六月に現在のホット株式会社に商号が変更されているが、営業は水道機器等の部品の製造・販売を主たる目的とし、山下が設立当初からの代表取締役として業務全般を統括していたものである。山下によれば、昭和四八年のいわゆるオイルショックの際に、被告会社が従来の業績上昇から一転して資金繰りに四苦八苦し倒産しかける事態に見舞われたことから、好況の時にこそ将来の不況に備えていわゆる裏金を蓄えておく必要があると痛感するとともに、自らも裕福な生活をしたいとの思いから今回の脱税行為を図ったというのである。被告会社の所得のごまかし方は、製品の製造過程で生じる真鍮屑等の売上を除外するとともに、架空の従業員給料を計上したり、棚卸を除外して架空の仕入を計上するなどの不正手段を用いて所得を圧縮するというものであるが、このようにして隠した所得の額は三事業年度で合計四億二八〇〇万円余りに及び、被告会社の裏金資金として簿外の提起預金等き形で留保されたり、木下個人の刀剣類や美術品の購入に充てられるなどしている。こうした犯行の罪質、動機、態様、規模(三事業年度の通算ほ脱率約六五・八パーセント)などいずれの点からみても、犯情はよろしくない。

したがって、被告会社が本税並びに重加算税及び延滞税等国税と地方税とを合わせて五億五〇〇〇万円余りを納付しているが、これとて実際には現金収入の乏しい中で借入金によってかろうじて賄い得たものであり、これにさらに加えて多額の罰金を支払うことは被告会社の死活問題に発展しかねないということ、そして、本件後平成三年一〇月決算期の利益は減少し、平成四年一〇月の決算期には赤字経営に転じていることなど所論指摘の事情を十分に考慮しても、原判決が被告会社に科した罰金額四〇〇〇万円をさらに減らすだけの事情があるとは認められない。その量刑が不当であるとする論旨は理由がない。

よって、刑訴法三九六条により、主文のとおり判決する。

(裁判官裁判長 岡本健 裁判官 阿部功 裁判官 鈴木正義)

平成四年(う)第一一一九号

法人税法違反被告事件

○ 控訴趣意書

控訴人 ホット株式会社

右事件について、次のように控訴趣意を提出する。

平成五年一月二三日

右控訴人弁護人

弁護士 辻公雄

大阪高等裁判所

第四刑事部 御中

第一審判決は量刑不当である。

第一審判決は、被告会社が昭和六二年から平成元年にかけて得た収入について、年間四〇〇〇~七〇〇〇万円の脱税をしたとして、罰金四〇〇〇万円を科している。

ところで、右三年間における収入と税金等の支払いは別紙のようになっている。

即ち、

1.三年間の真の総所得は(万未満切捨)、金六億六四九一万円。

2.右収入について支払った金額は、当初三年間に支払った法人税額九一三九万円、二年間に支払った消費税額二年分)一三七七万円等を含めて最終的に支払った金額は別紙税金一覧表のとおりであり、小計五億五二九六万〇四〇〇円である。

3.右1.2の差引残は約一億一一九五万円である。

会社として所得があってもそれは製品等を含めて計算上のことであり、現金としてではない。

また、次の措置に使われており、自由になる現金はごく少ない。

現金収支としては税金を支払う為には不足としており、借入金でかろうじて支払い得たものである。

このような中で更に四〇〇〇万円の罰金を支払うことは、会社にとって極めて過酷であり、銀行も融資してくれず、倒産の危険もあり、いわば死刑に等しい。

従って、罰金について今少しの低減を求める。

〈省略〉

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